なぜ賃貸併用住宅を勧めないか

それって本当に「お得」ばかりですか?

じゃあ、まあメリットから

賃貸併用住宅の唯一のメリットは、住宅ローンが使える事です。一般的にアパートローンと言われる審査が緩めのパッケージローンは、金利が3%~4%と高い設定となっていますが、住宅ローンであれば1%以下になる事もあります。また条件次第では住宅ローン減税(多分自宅部分だけだろうな)も受けられるでしょう。

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とはいえ、ハウスメーカーや工務店はこの買主のメリットを最大限に活用して、できるだけ高く、できるだけ利益を乗せて売ろうとしますので、結果的に買主の収益性が高くなることはないでしょう。だって、賃貸併用住宅を売る側の宣伝文句は「毎月○○円儲かります」ではなくて、「毎月○○円の支払いで済みます」ですから。

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ましてや住宅ローン減税を活用したいのなら、収益物件とは別に自宅を購入すれば良いだけの話です。

はい、次デメリットね

客観的に見て、賃貸併用住宅には多くのデメリットがあります。1つ目のデメリットで、最もよく言われるのが「賃貸の入居者と同じ建物に住まなければいけない」という点です。とはいえマンションやアパートなど、一般的な集合住宅でも、他人と同じ建物に住んでいる事には変わらないので、賃貸併用住宅でも問題無いという主張でしょうが、その程度は本質ではないので、まあそれはそれでいいのではないでしょうか。
(そこを議論している時点で幼稚でくだらない)

2つ目のデメリットとして、問題入居者がいたときの対処が難しいという点があります。一般的な集合住宅に住んでも、賃貸併用住宅に住んでも、同じ建物に他人同士が住むことには変わらないという主張は正しいとして、一般的な集合住宅であれば、問題の有る入居者が隣や上下階に住んでいたとしても、最悪の場合引っ越せばいいだけの事です

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ところが、賃貸併用住宅ではそう簡単にいきません。

賃貸併用住宅に住んでいて、「下の入居者がうるさいから引っ越す」なんてことは簡単にできません。逆に下の入居者に出て行ってもらいたいと思っても、我が国の法律では借主が保護されているので、貸主の都合で追い出すのは困難です。そもそも家賃を支払ってくれる入居者は、ある意味大家にとって大事になお客さんなので、退去されるとローン支払いのあてにしている家賃収入が減ってしまいます。
(そして、もし貸している部屋で孤独死が起きたら…。想像したくない。)

3つ目のデメリットに間取りの使い難さがあります。賃貸併用住宅は通常融資を受けて建てますが、融資条件として延べ床面積の50%を居住用の自宅スペースにする必要があります。逆に言うと、賃貸部分の面積が自宅部分の面積に制限されるという事です。例えば、自宅部分を3LDKで80㎡にしたければ、同じ80㎡を分けて1Rや2LDKといった賃貸スペースにする必要があります。そこに一生住むのであれば問題ありませんが、そうでない場合は1Rx4部屋、3LDKx1部屋といった中途半端で使い難いアパートとして売却することになります。

こんな感じのアンバランスになるかも…

4つ目のデメリットは実需向けと賃貸向けとの設備の乖離です。賃貸物件と実需物件の両方に住んだことのある人なら、その設備のグレードの違いが分かると思います。賃貸物件の場合、壁は薄いし、エアコンは安物だし、内装材も量産品だしと、随所でコスト削減の努力が見られます。一方実需の場合、豪華なシステムキッチン、快適なバスルーム、こだわりのクロス等、コスト度外視の材料が使われています。建物全体で考えれば、半分を占める自宅部分についてのコストは高くならざるを得ないという事です。収益物件としてはもったいない話です。

そして5つ目の最も大きなデメリットは収益性の悪さです。商売をやっている人なら誰でも同意してもらえると思いますが、販売予定の商品を自分で消費してしまうことは大きな機会損失です。例えば、漁師さんが1万円で売れるのが分かっているウニを、2個取れたからと言っていつも1個食べてしまえば売り上げは1万円ですが、2個とも売れば売り上げは2万円になります。賃貸併用住宅もこれと同じ考え方で、本来ならローン返済以上の家賃が取れる物件に自分が住むことは、機会損失以外の何物でもありません。

具体的な数字で考えてみましょう。

<賃貸併用住宅>

物件価格5000万円
割合自宅部分=50%、賃貸部分=50%
(2500万円の自宅と、2500万円のアパートを購入したとも言えます)
月返済額30万円(金利、融資期間は一旦無視します)
家賃収入25万円
年間CF(25万円-30万円)x12=-60万円

賃貸併用住宅の場合、家賃と返済額の差額は25万円-30円=-5万円、つまり3LDKの家に家賃5万円で住むことができるというのがメリットですね。

それって、果たして本当にメリットでしょうか?

同じスペックでアパートを取得した場合を考えてみましょう。

<アパート>

物件価格5000万円
割合賃貸部分=100%
月返済額30万円(金利、融資期間は一旦無視します)
家賃収入50万円
(賃貸併用の場合に賃貸部分の家賃を25万円としたので、単に2倍しただけです)
年間CF(50万円-30万円)x12=240万円

仮に同じ場所に同じ規模のアパートを建てたとしたら、同じく購入価格5000万円で家賃収入が月50万円となります。返済は30万円なので、毎月20万円のCFを生み出す優良物件です。そしてこの20万円で別の場所に住めば、前述のデメリットは全て解消されます。

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賃貸経営の観点から

不動産投資を考えるうえでは、常に賃貸経営事業の経営者としての客観的な目線が非常に重要です。経営者として賃貸併用住宅を「収益物件」として分析すれば、メリットよりデメリットの方が多く、しかもデメリットは経営努力で改善の難しいものばかりです。従って、将来賃貸経営で物件保有規模を拡大して、CFを増やす予定のある人にとって、賃貸併用住宅はお勧めできる物件ではありません。あと、住宅ローンで建てた賃貸併用住宅物件に自分が住まないのは反則です。売却してしまえば良いってものでもありません。ふんどし。

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