都合のいい数字は何の為?

そもそも答えの無い計算問題なんて「まやかし~」

○○という数字は、○○%以上が良い

不動産投資の勉強を始めた際に、まず最初に覚える指標は「利回り」ですよね。この辺の数字は元々株など一般的な投資や、金融業界で扱われる数字で、投下した資本に対して得られる収益の割合=程度を示しています。特に不動産投資では年間家賃収入を物件価格で割ったものを利回りと表現していますが、家賃には様々な出費が含まれていることを明示する為に「表面利回り」と呼ぶこともあります。
「表面」があるんだから「裏面」も当然ありそうですが、「裏」という言葉の印象が良くないからでしょうか、「裏面利回り」という言葉は聞いたことがありません。毎月定額の出費を控除した家賃収入で利回りを計算したものは「実質利回り」等と呼ばれています。区分マンションなどは、毎月定額の修繕管理費を管理組合に支払わなければいけないので、その分を除いて「実質利回り」で示されることが多いようです。

この利回りですが、9%あれば十分という人もいれば、15%以上と書いた書籍を出版した大家さんもいますし、逆に利回りなんて関係ないという方までいらっしゃいます。
いったいどれが正しいんでしょうね?
そもそも家賃は想定であることが多いので、担当者のさじ加減で上がったり下がったりしますし、物件価格も交渉において変動しますから、利回りなんてあてにならない数字で、どれも正しくないというのが正解です。

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物販など一般的な商売では、仕入れコストを下げることや、販売価格を上げることが可能なので、経営者の判断で利益率(=利回りに相当)をコントロールできますが、不動産投資では大家さんが物件購入価格を勝手に下げたり、賃借人の同意なしに家賃を上げたりはできないので、運用中の利回りをコントロールするのは簡単なことではありません。
したがって、不動産投資における利回りというのは、年間の家賃収入が想定より大幅に増減する事がない前提での指標だという事を理解したうえで、投資する際の判断材料として使う必要があります。
逆に言うと、実際の家賃収入なんてものは、ちょっとしたきっかけで大きく減少しますので、それに連動して減少する利回りという数字は、運用していく中で何かを保証してくれる指標では全くないという事です。

返済比率は低ければ良い?

先日ツイッターのTLで返済比率に関するボヤキを投稿したところ、たくさんの方に「いいね」を押していただけました。

私のように金融機関から融資を受けて収益物件を取得する場合、家賃収入の一部を返済に充てなければいけないのですが、同じ家賃収入でも返済額が大きければ自由に使える所得部分が減りますし、返済額が小さければ自由に使える所得部分が増えます。この家賃収入に対する返済額の割合を返済比率と呼んでいます。

毎月の返済額÷毎月の家賃収入=返済比率(%)

利回りのくだりで説明した通り、家賃収入なんてのは簡単に減りますので、返済比率もたいして当てにならない指標ですが、利回り同様上限のある指標である事を理解しておいてください。なぜなら、家賃収入の上限は大きく変わりませんし、返済額も簡単には減らないからです。

やっぱり定期預金ではお金は増えない!?|ヒューマンネットワークグループ


この返済比率という数字も低いに越したことはないのですが、鵜呑みにしてはいけない指標だという事を理解してください。なお経験的、感覚的な話で恐縮ですが、返済比率が50%を大きく超えると、手元の現預金が増えないので綱渡りのように不安定な経営が続きます。

Let’sしみゅれ~しょん

実際に数字を使って利回りと返済比率の関係を見てみましょう。できるだけ「現実」を意識した数字を使って二つのケースを比べてみます。これはあくまでも理論上の話なので、取得費用、管理費等の経費は無視して考えるものとします。
期待できる家賃収入が同じ、二つの物件という観点から以下のケースを設定しました。

<ケース1>
物件価格:3000万円
家賃収入:300万円(利回り10%)
金利:3.5%
融資期間:30年
自己資金:0円

<ケース2>
物件価格:6000万円
家賃収入:300万円(利回り5%)
金利:1%
融資期間:30年
自己資金:0円

毎月の家賃収入から返済額を引いたものを、便宜的に「月CF」と表記します。
まずは入居率が100%、全国の大家さん大好き「満室」の場合です。

物件価格融資額融資期間金利返済額利回り入居率月家賃月CF返済比率
ケース130,000,00030,000,00030年3.5%134,71310.0%100%250,000115,287 54%
ケース260,000,00060,000,00030年1.0%192,9845.0%100%250,00057,01677%
入居率100%の場合

どちらのケースもしっかりと手元の現預金が毎月増える計算です。
「それぞれのケースで、そもそも物件価格が違うから比較にならないじゃないか」と思うかもしれませんが、ある一つの物件において、金利を自由に上げ下げすることや、同価格帯・同スペックの物件で金利を選ぶことは、一般的な投資家には不可能なので、同じ物件価格で金利を変化させて議論する事には無理があります。後述しますが、投資家が物件の選択肢を考える際に、現実的な流れとして起こりうるケースとして、ケース1は築古アパート、ケース2は新築アパートを想定しました。

さてここでアクシデント発生です。アパートに退去があって、入居率が75%に下がってしまいました。月CFの減少に伴い返済比率も大きく減少したことが分かります。

物件価格融資額融資期間金利返済額利回り入居率月家賃月CF返済比率
ケース130,000,00030,000,00030年3.5%134,71310.0%75%187,50052,787 72%
ケース260,000,00060,000,00030年1.0%192,9845.0%75%187,500-5,484103%
入居率75%の場合

ケース1では、入居率75%でも現預金は増えていく計算ですが、ケース2では毎月赤字が続くので、他の収入源から得た利益や預貯金から補填する必要があります。
入居率75%というのは4部屋のアパートで1室が空室、8部屋のアパートで2室が空室という状態なので、決して非現実的な設定ではありません。
新築アパートで1年目から空室が続くことは無いかもしれませんが、4年後、5年後には十分想定される状況です。

高いなら低くすればいいじゃない

マリーアントワネットは、「(パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」(Wikipedia参照)という発言で貧困にあえぐ庶民の反感を買ったと言われていますが、実際に彼女が発言したのではないそうですね。

お金がなければ買わなければいいじゃない

「返済比率が高いなら、下げればいいじゃない」と彼女が言うとは思えませんが、簡単に実現する方法があります。それは、自己資金を増やして融資額を減らし、毎月の返済額を下げることです。ここではケース2において自己資金1500万円を用意することで、返済比率を50%台に下げることができました。

物件価格融資額融資期間金利返済額利回り入居率月家賃月CF返済比率
ケース130,000,00030,000,00030年3.5%134,71310.0%100%250,000115,28754%
ケース260,000,00045,000,00030年1.0%144,7385.0%100%250,000105,26258%
ケース2で自己資金1500万円、入居率100%の場合

これで毎月のCFも増え、安定した経営が続けられるような状況になりました。

ただし、最初に投下した1500万円という資金を回収するのに10年以上かかるので、月々の収支は安定しますが投下資金の回収に時間のかかる効率の悪い不動産投資となります。

買えるから買う

一見比較に無理があるよう思える、2つのケースを引き合いに出したのには理由があります。
不動産投資を始めたばかりの頃は、できるだけ近所で、できるだけ駅近で、できれば満室で、できるだけ利回りが高くて、できるだけ築浅でと、考えられる最良の条件を並べて物件探しを始めるのですが、探し始めればすぐ現実に直面します。(←ここ、ウンウンと頷くところ)
なぜなら、そんな理想的な物件はゴロゴロ転がっておらず、利回りが良いと駅から遠い、駅に近いと狭くて古いといった感じで、市場で流通している物件はどれも理想からは程遠いからです。

現実逃避のイラスト(女性) | かわいいフリー素材集 いらすとや
買える物件が無いんだからしょうがないんだよ~ん


そうなると、遠方でもいいから、築古でもいいから、バス便でもいいからと一つ一つ妥協しながら、自分で落としどころを探していくのですが、それでもなかなか良い物件に出会えずストレスが溜まっていきます。そうこうするうち「今はこのスペックの物件だったら買えるから買っておこう」という思考に行きつき、シミュレーションを使って都合の良い数字を入力し、あれもこれも妥協し、自己資金もあるだけ使って、金利はいいからと、自分で自分を納得させて買おうとする、典型的な「物件買いたい病」(別名「大家さんになりたい病」)に罹患するのです。(そうなった頃には、もはや何を求めて不動産投資を始めたのかすら忘れていたりします。)
これは誰もが通る道で、私自身何度も経験していますし、今でも時々陥ってしまうので自戒の念を込めてこの記事を書いています。

物件買いたい病のイメージ

買いたい病からのリハビリ

「物件買いたい病」に罹患してしまった時は、一度深呼吸をしてから冷静にかつ客観的に物件を分析してください。その際、ここまでで説明したように、取得時に検証する利回りや返済比率といった数字の意味をよく考えながら、かつそれらはあくまでも指標であり、保証ではないことを念頭において、最終的な判断を下してください。
いつも申し上げていますが、インカムゲインを求める不動産投資で、最も重要なのは「買う事」ではなく、「買ってから効率良く運用する事」であって、せっかく高いスペックの物件を取得しても、効果的、効率的に運用できなければ、期待した通りの利益を得ることができず、宝の持ち腐れになってしまってはもったいない限りです。

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